突出してきた敵を迎撃しつつ皆の奮闘により少しずつではあるが数を減らしていく だが今だ敵の数は多く、一進一退の攻防を続けている 「主殿!」 名を呼ばれ、振り返れば華雄と伯珪に率いられた騎兵隊が土煙を立ててやってくる 「華雄!伯珪!」 「すまん一刀、行軍に少し時間がかかった。だが遅参した分は戦功で返すさ!」 「ゆくぞ!全軍突撃!傀儡となった兵など恐るるに足りん!皆存分に己の武を示せ!!」 「「「「「おおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」 「ああ!?華雄の奴美味しいとこもってきやがって!こっちも突撃開始、白馬陣の力、見せてやれ!!」 左翼の朱里隊と紫苑隊が少し後退し、そこへ騎馬隊による突撃が開始された 〜中略〜 「何!?まだ増えるのか!?」 「流石に、この状況は拙いですね・・・もう私達も魏も呉もあまり余裕はないですし・・・」 銅鑼の音が辺りに鳴り響く 「はっはっはー!まだウチらがおるで!!」 「・・・・・・助けに来た」 そこに現れたのは霞と恋。残存兵力は無かったはずなのだがそこにいたのは皆正規兵で― 「これは・・・!?異民族襲撃や反乱の対策に残していた兵達か!」 「そうや。皆ご主人様達の為に戦いたい言うてな。ウチらが出陣しても、まだ詠達がおる。後ろの事は気にする必要ないで。ちゅーわけで、いくで恋ちん!」 「ご主人様の敵、倒す!」 「全軍、突撃や!!」 「今こそ張遼将軍の、そして北郷様のご恩に酬いる時!進めー!!皆、死を恐れず全力で戦え!!!」 長時間最前戦での戦闘で疲労していた兵が下がり、その穴を埋めるように突撃をする霞と恋達 これで戦いっぱなしだった兵も少しずつだが一息つける。後退した兵達も回復次第再び戦えるし、これならなんとかなるか? 辛うじて兵力はこちらが上回っているが皆消耗が激しい。どうにか出来ないものか・・・ 「一刀様〜!」 「ぬあ!?」 後ろを振り返れば黒い集団を引き連れた玄徳がいた 黒い集団は皆武器が統一されていない。というか武器を持つ者は少数で後の者は武器を持たず、大きな荷物や牛車で何かを運んでいる? 「私も、みんなも、一刀様の力になりたくてここまで来ちゃいました」 笑顔でさらりとトンデモナイことを言ってのける玄徳。後ろにいるのはどうみてもただの民です、本当に(ry 「って混乱してる場合じゃない。玄徳!力になりたいと言ってくれるのはありがたいが武器も無い民達では戦えない!早く戻るんだ!!」 「義民兵でも、直接戦えない人でも戦う術はあるんです!冠封!負傷者の看護と治療は任せます!」 「はい!任せてください先生!」 後方に下げられていた負傷兵の元へと向かう義民兵達。彼らは荷物や牛車から包帯や薬箱やらを出し、負傷者の手当てをしてくれる 「武器を持つ者は前線へ!負傷者の後退を援護します!」 残りの武器を持つ者達が玄徳に率いられて前線へと向かう 戦闘兵力としては左程変わらないが、看護兵として参戦してくれたのは非常にありがたい これで少しは消耗を和らげられる・・・ 「おいおい、まだ増えるってのかよ・・・・・・いい加減諦めて欲しいんだが。なぁ華雄?」 「ふん、敵が増えるのならば片っ端から倒すのみ!弱音を吐くなら下がっていても構わないぞ伯珪!」 「誰が弱音を吐くか!ただ愚痴をだな・・・」 「口を動かす暇があるなら手を動かせ!」 「はいはい。だからって一人で突っ込みすぎるなよ!」 これで何度目か?再び敵の数が増えた。だが兵力もこちらが上回り、士気や消耗も抑えられているのでこのままならば勝てるだろう まあ出来ることなら最後の一押しが欲しいところだがそんな贅沢は― 「おーっほっほっほ!苦戦しているようですわね北郷一刀。ですが安心なさい。この袁本初が来たからには勝利は約束されたようなものですわ」 「げぇ!袁紹ぅ!」 「伯珪さん!折角助けに来た私に向かってげぇ!とはなんですか!」 「いや、今まで袁紹が前線に出てくると良くない事ばかり起きてたから・・・」 あーうん、まあそんなことも無きにしも非ずな・・・・・・微妙な空気がこの戦場を覆い、何故か敵の動きも鈍くなった・・・ 「そ、そんなことありませんわ。伯珪さんの勘違いでしょう・・・さあ、みなさん!生まれ変わった袁家の力、見せておやりなさい!」 「でも直接戦うのは私達なんだよね・・・・・・」 「あっはっは、気にすんなって、あいつらはあたいがぶっ倒す。斗詩、背中任せたよ!」 「うん、気をつけてね猪々子」 「チビ、デク、俺達もいくぞ!」 「「へい、アニキ!」」 全軍がモーゼの10戎のように2つに分かれ、その開いたところを通り敵へと突撃を始める 「やっぱり皆あいつの危険さは理解しているんだなぁ・・・」 「そのようだな。まさかここまで素早く行動出来るとは・・・」 この一瞬、俺達の心は間違いなく1つになったに違いない―― やがて敵の抵抗も弱まり、ぽこぽこと表現したくなるほど沸いていた敵の増援も止んだ だがそれは儀式の完成が近いということであり急いで阻止しに行かなくてはならない この場は皆に任せよう。愛紗、鈴々、翠、華雄が関内を突破しながら進み、俺はその後ろからついていく 俺の後ろからは朱里、星、紫苑、伯珪が背後から来る敵を排除しながらついてくる やがて薄暗い廊下が途切れた時、俺達の前に荘厳な景色が広がった― 〜中略〜 捨てることも出来ぬまま、淡く光を生じ始めた銅鏡を抱え、俺は貂蝉の言葉に導かれるように一人の少女を思い描く それは―――――――― 華雄のことを思い描いた 伯珪のことを思い描いた エンディング 華雄のことを思い描いた 伯珪のことを思い描いた ニア 俺についてきてくれた皆のことを思い描いた 淡い光を放ち始める鏡 その光はこの物語の突端に放たれた光 白色の光に包まれながら、俺はこの世界との別離を悟る 自分という存在を形作る概念 その概念が薄れていくことを感じながら、それでも俺は心の中に愛しき人たちを思い描く みんな――― 俺のことをずっと支えてくれていた仲間達 突然現れ、戦争の火種を持ち込みながらも俺を、俺達を信じて共に戦ってくれた幽州の人達 豪胆な華雄、無口な恋、陽気な霞、口うるさい詠、心根の優しい月 力の無かった俺を助けてくれた、義侠に富んだ伯珪 敵対し、そして文句を言いながらも仲間となり、俺達を助けてくれた華琳達 復讐に憑かれたが彼女の友人達のお陰で元の優しい女性に戻り、統治を助けてくれた玄徳 王としての責任、役割・・・そういったものを教えてくれた蓮華達 暴走し、様々な問題を引き起こすもいつも自信だけは失わない麗羽達 戦争に巻き込まれ、不安になりながらも俺達を受け入れ、最後には笑顔になってくれたこの大陸の人達 みんなの顔が浮かんでは消え――――って、あれ?何か忘れているような・・・・・・ 「何だっけ?」 「どうかしたの?」 「いや、何か忘れているような・・・・・・っ!?な、なんだなんだ!?」 突然、この神殿に激しい揺れが起こった。立てないほどではないが、こうなったらどうすりゃいいんだ? 「むっ!?なんですかこの揺れはっ!こんなものはプロットに無かったはず!」 「この世界に何かが起きているのでしょう」 「決められた終端ではなく、新たな終端が生まれたかもしれない、そういうことですか」 「ええ。だけどそれもまたよし。どんな物語でもそれが望まれるなら生まれ、存在することができるのだから」 「全く、外史とはやっかいなものだ」 「確かに厄介かもね。だからこそ正史の人々は魅せられるのかもしれない。そこに無限の可能性があるから」 「・・・ならば時に任せましょう。新生した外史が、どのように形成されるのかを・・・」 「そこ!のんびりと語ってないで状況を説明しろー!」 「はいはいはいー!呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ピキーンという音が聞こえ空気が凍ったような気がする。どこからともなく現れた謎の人物に皆の視線が集まる 「むぅ、空気が凍ってしまいましたか。いやはや、こういうときはこう言えば言いと聞いていたのですがねぇ・・・」 「桃屋のおっちゃん!?なんでこんなところに!?」 そう、そこにいたのは洛陽へと本店を移し、商売に励んでいるはずの店主の姿が― 「管輅殿!?なぜこのような所に!」 「何ー!?」 愛紗の爆弾発言でさらに驚きが。管輅って確か占い師じゃなかったのか!? 「お久しぶりですな関羽殿。この場にいるのは・・・まあ彼ら剪定者と同じように太守様を見ていたからですよ」 「どういうことか、説明してくれるよな?」 「それは勿論。一応弁明しておきますが私は彼ら剪定者と違い、正真正銘この世界の人間で彼らに傀儡とも呼ばれる存在」 そういって語りだすおっちゃんの姿はいつもの商人のような雰囲気ではなく、何か重大な事を告げる神主のようだ 「私はト占を会得し、様々な事柄を知る事が出来ましたが、関羽殿に告げた天の遣いが現れてからの事柄がまったく分からなくなったのです」 「俺が・・・原因?」 「原因と言えば原因でしょうが、気にする必要はありません。先が見えなくなった、と言うことは別の見方をすれば天命による未来ではなく、 人命による未来が開かれる、という事です。それは私にとってとても興味のあることでした。だから私は貴方を身近で見る為に店を開き、観察していたのです」 「馬鹿な!北郷一刀が訪れた世界での終末は一つでしかない!それが変わる事など、こいつを殺さない限りありえん!」 「ですが事実、決められた終末は起こっていない。それが現実なのです」 「・・・・・・・・・・・・」 「私はある日、この世界の管輅になるはずであった剪定者と言うものからいくつかの事象を聞かされた」 「ほぅ、それは興味深い事ですね。その方はこの世界をどう判断したのでしょうか」 「聞かされた内容は少ないですが、一番重要なのはこの世界と正史がリンクした、と言うことでしょうか」 「「何!?」」 この世界が正史とリンクした、つまりこの世界を継続する為の力が働いたということか? 「偶然、本当に偶然のようですが、この世界の別の外史の物語を正史の人々は知り、そしてこの世界の物語を正史の人々は肯定し、支持し始めた」 「抽象的な想念ではなく、直接の物語を知った、というのであれば正史との繋がりが固定されたのも頷けるわね」 「そして正史の人々はその物語からさらに想念を増やし、枝分かれしていった世界。それが・・・」 「この世界、というわけですか」 「はい。そしてこの世界を創造した正史の人々は世界の新生ではなく、継続を望んだ。その影響によってこの世界の決められた終末というものは失われたのです」 「ではどうすればこの世界を消滅させられる?俺達はこの世界を消滅させなければ―」 「既に結末がわからなくなった以上、そして正史とリンクしてしまった以上この世界を肯定するも否定するももはや意味はありません」 「っ・・・・・・・・・・・・俺達は、どうすればいい?」 「それは貴方達が自分で決める事でしょう。幸い、この大陸の統治者がそこにいますから当面の居場所は確保できるでしょう」 「げ」 いきなり話の矛先がこちらに移る。うん、実は言ってることあんまり理解出来なかったんだけど・・・ 「まあ、この世界が消滅せずに済んで、こっちに永住出来るってのならそれくらいの苦労は請け負おう」 「ふふ、それでは世話になるとしましょうか。ああ、出来れば私と左慈は同室にして欲しいのですが」 「ふざけるな!おい北郷、俺とこいつの部屋は絶対に分けろよ!」 「ふふふ、そう恥ずかしがらなくてもいいでしょうに。それでは北郷一刀、またお会いしましょう」 そしてその場から消える左慈と干吉。ああ、いきなり所帯じみたなぁ、あいつら・・・・・・ 「それでは太守様、私もこれで。ああ、恐らく私が消えると貴方に認識されていた者が還ってくるでしょう。それが正史の人々の想念でもありましたから」 「それは、どういう・・・」 「もしも死者が生きていたら。それは誰しもが想像し、馬鹿げた考えだと忘れられていくもの。ですがそれが忘れられず。想像され続けていたら?という事ですよ」 店主、いや管輅が消え、手元にあった銅鏡が再び輝きだす 「う、わっ?」 光が収まり、そしてどこかで聞き覚えのある声が聞こえた 「ここは・・・一体・・・・・・」 「まさか・・・周喩、か?」 「ん?北郷殿・・・ここは何処なのだ?」 「あ、ああ此処は泰山の、ってんな事言ってる場合じゃねえ!誰か、急いで蓮華達を呼んできてくれ!」 「了解なのだー」 「あたしも外が気になるし、ついていくよ。ついでに他の奴等にも戦いが終わった事、伝えないといけないしな」 部屋の外へと駆け出す鈴々と翠 「まったく、あの者達が立ち去った以上傀儡であるあの兵士達は消えるだろうに・・・もう少し事態を理解して貰わなければ・・・」 「まあいいではないか。戦いも終わり、ご主人様やこの世界が無くなる事も無いのだ。少しくらいはしゃいでも構わないだろう?」 ぼやきながら歩き出す星にそれを諌める愛紗 「それでは私も先に戻りますね。負傷者の看護や兵達の統率には人手があったほうがいいですし」 「私も先に戻ります。周喩さんがここに居てもおかしくない理由、考えないといけませんね」 マイペースで部屋を出て行く紫苑と再び難問を抱え悩みながら歩いていく朱里 「私も先に帰っているわよん。またあちらで会いましょうねご主人様」 協力してくれたとはいえ、その恩を反故にしたくなるくらいきしょい動作をして消える貂蝉 「これで一安心、といったところか。元の世界へ帰る、なんて事はないのだろう?」 「ああ、それは大丈夫なはずだ。正史の人々ねぇ・・・なんか覗かれてたようで嫌だが、こうしてここに残してくれるなら感謝しないとな」 「よかった、ちゃんと約束は守られたみたいで。それじゃ、戻ったら宴会でもしますかっ!」 「えーと・・・・・・」 「ああ、すまんすまん。とりあえず蓮華達が来るまで事情を話すよ。まず――――」 事情を全て話し、呆然としている所へ鈴々に連れられて蓮華がやってきた 一度は対立してしまったとはいえ、あの2人は本来仲が悪いわけではないのだ。確執を捨て、民達の為に働いてくれるだろう 2人が落ち着いたのを確認し、神殿を出る。そして関を出た所で全ての兵と将、そして仲間達がこちらを見ている 宣言する。戦いは終わったのだと。そして俺が元の世界に帰る事無く、この地で皆の為に働く、と 湧き上がる歓声、そして皆笑顔で隣人に抱きつき始める とても微笑ましい光景ではあるが戦いが終わったとはいえまだやることはあるのだ 手の空いているものは各地への伝令として勝利を伝えて貰ったり負傷者の手当てに当たって貰う そして洛陽へと凱旋する――――――――― 〜それから〜 城の一角に住み着いた左慈と干吉は術で外見を変え、度々街へと出て人間として生きることを学んでいる 干吉はすっかりこちら側に染まり、よく酒場などで酒を飲んだり、貂蝉と妖しい相談をしたりしている 左慈は干吉ほど馴染めず、だが少しずつこちらに染まっていっている 最近の悩みの種は干吉の言動のようで、他人事とは思えないなーと思いつつもこちらへは実害がないので放置している あの2人の変化には管輅の暗躍があったに違いない、と俺は見ているが・・・・・・ 最後の戦いにおいて決定打となった兵達を指揮していた麗羽は 「この勝利は私がもたらしたものですわ。みなさん、存分に私を褒め称えなさい」 といつもの如く。事実麗羽達のお陰で必要以上の消耗が避けられたので今回は誰も異議を言わず あまりの反応の無さに戸惑い、華琳に当たるも素直に麗羽を認めた為気を良くし、酒を飲みまくってぶっ倒れた その後二日酔いから回復すると、一つの置手紙を残して斗詩と猪々子と共に去っていった 曰く世界中のお宝と美女が私を待っている、そしてそれを見つけるために袁紹探検隊を結成したとの事 新たな交易路や資源を開拓する為の部隊を作るつもりではいたので無用な外交問題さえ起こしてくれなければという条件を付けて支援することにした アニキ、チビ、デクを筆頭に麗羽を慕う者が後を追ったが半年後、大量の雪や氷を馬車や牛車に積んで持ち帰ってきた 目立つ為にか馬車の上で立ちながら高笑いし、その声に驚いた馬が暴れ地面に落下。その馬車の御者をしていたアニキはしこたま罵倒され叩かれた その時のアニキの顔は光悦に浸り、猪々子のいる馬車の御者だったチビは鼻の下を伸ばし、デクは少し痩せていたのをここに記しておこう・・・・・・ 玄徳は名医と評判の華佗を探し、医学を習い医師になる事を決意し、旅立った どうやら最後の決戦で負傷者を助けきれず、自分に知識と技術があれば、と後悔したらしい。それは参加した義民兵達も同じ思いで・・・ 華佗から医師としての知識を学び終わったら再び故郷で私塾を開き、医学を教える先生となると宣言した 頼むから変な薬の精製法は学んでこないでくれよ、と切実に願いながら俺は玄徳を見送った 蓮華達は冥琳(真名で呼ぶ許可を貰った。床の中で)と和解し、旧呉領で遠洋技術と航海技術の開拓に力を入れてもらっている 海の資源の獲得と航海技術の向上による船舶能力向上で川沿いの災害地へ一気に救援物資を運びこめるように、と考えたからだ まあそれは建前で、本音としてはそろそろ日本の味が恋しく、航海技術が上がれば今は倭と言われているあの島国と交易出来ないかな?と思った次第 だが以外な事にこちらが外へ出るよりも前に邪馬台国の使者、と名乗るものが呉に上陸し、護衛を伴ってこの洛陽へとやってきた その話を聞いた時、一瞬金印でも作るか?と思ったが今は漢ではなく北郷になってしまうので取りやめた。流石にそれははずい 彼らがやってきた後、呉では遠洋技術の発展に目を向けられた。海を渡って他の未開の地へ行けると知り、冒険心が擽られたのだろう 冥琳と穏によって遠洋航海計画が立案され、思春を筆頭にそれは実行へと動き始めた 技術的な問題で当面は倭くらいにしかいけないだろうが、将来的には大航海時代の前倒しが起こるかも?と思ったりもする 最後の戦いから数ヶ月、蜀の南の地にて異民族による襲撃が多発した 新しく南蛮の地を統治する長孟獲が北へと勢力を拡大しているらしい 無論それを黙って見過ごすはずはなく、南蛮討伐の部隊を編成しようと軍議を開く 総大将は朱里に任せるつもりであったのだが「暇」という一言で華琳達がこれの討伐に当たることに決まった お互いに戦況報告や物資配達のやりとりをしていたが遠征開始から数ヵ月後、麗羽達が雪や氷を持ち帰り、氷室を作ったと知ると情勢が変わった 南蛮軍が象兵を前線に出した時期と偉そうな手紙を遣す麗羽に華琳の我慢の限界が来た時期が丁度一致したのだ 一気に兵を動かし、南蛮軍の長孟獲を南へと追いやり不可侵条約を結び、そして戦利品として多数の象を持ち帰り凱旋した 象と氷室の前でお互いを威嚇し、罵倒し、己の功績を相手に叩き付け、そして冷戦が始まった 再び旅立つ麗羽。部下の行っていた科学という実験に目をつけ、それの研究をしたいと申し出た華琳 まあいつものじゃれあいの延長だろう、と城の大半の者はそう思った 尚この南蛮平定戦において猪突猛進すぎて毒沼に嵌り、病にかかった春蘭とそれの看病に当たった秋蘭の奮闘も忘れてはならないだろう 洛陽では詠、月、恋、霞によって動物園計画が立てられ実施された 華琳達が象を持ち帰った時、思わず動物園でも作る気か、といったのを恋が聞き、動物園について尋ねてきた 俺はあっちの動物園の事を話すと恋はその話を詠と霞にも話し、様々な面で利点があり、有効であると判断されたのか動物園建設を陳情してきた この話に朱里や紫苑も加わり、動物園建設の動きは大勢の民に伝わり、子供達の娯楽施設として期待されるようになった そして動物園が開園した時一番人気となったのは珍しい動物の象ではなく、園長になった恋の側にいたセキトであった・・・・・・ 紫苑は朱里と協力し、治世を行っている。また交易路の開拓や資源の確保に目を向け、麗羽の発見した場所へ探索隊を派遣するなどしている また非常時用にと余った物資を地理上安全な土地へ集めており、例え災害が発生してもすぐにその物資によって立て直しが出来るだろう 星は未知のメンマと酒を求めて思春に協力し、倭へと渡るつもりでいるようだ 流石にこの時代には倭にメンマも酒もないと思うが・・・まあそれを告げるのは無粋だろう。もしかしたらあるかもしれないし 翠は治安維持や緊急の討伐の為の兵を指揮し、訓練している。現在我が国では武官が減っている為実質軍事の最高指揮官である 尤も、書簡仕事が苦手な為よく街へと逃げ出したり臨時訓練を行ったりと昔の俺のような事をしている 朱里はやはり軍師ではなく能吏の人だったのだろう。俺だけでは目の届かない地での統治に力を注ぎ、そのお陰で各地は繁栄を見せている また法の改正等にも手を出し、悪人が暗躍できないように調整している 鈴々は武器を手放し、孤児院を立てて戦争孤児となった子供達を集めた こちらから人員や物資等は提供しているが大勢の子供達の相手は大人でも大変で、それでも友達が一杯出来た、と喜んでいる 愛紗は様々な面で活躍している。紫苑や鈴々の手伝い、俺や朱里、翠の補佐等、統一前より忙しいのではないか?とも噂されている だが本人はその忙しさにも満足している。また算盤を開発し、管輅の協力の下各地の文官達へと配布した。皆その使い易さに喜んでいる そして―― 「何読んでいるんだ伯珪?」 「うわっ!?なんだ、一刀か。驚かすなよ」 「驚かすなって言われても普通に声かけただけなんだが・・・んで、それどんな本?」 「ん、華雄から借りた奴」 「ふむ。何々「恋姫無双〜Empires〜三空気衆下克上編」?ああ、またあそこの本か・・・」 「そ。この本なんでか知らないけど私と霞と華雄が君主の座を奪い合いながら大陸を統一するって話で」 「・・・・・・相変わらずメタな本だなおい・・・・・・」 「当然といえば当然だけど本だと私達の性格が違っていてね、それを比べるのも案外面白かったりするんだ」 「は〜、なるほどねぇ・・・」 「ま、それは置いといて。何か用があったんじゃないのか?」 「んー?いや特に用はないよ。ただ暇になったら会いに来ただけ」 「おいおい・・・随分と気楽な君主様だなぁ〜」 「はっはっは、部下が有能すぎると楽出来ていいな、うん」 「ウラヤマシー。こっちは逃げ回る翠捕まえて監視しながら書簡終わらせて、ようやく取った休日だというのに・・・・・・」 「まあまあ、とりあえず街いこうぜ。今月はまだ小遣い残ってるから飯でも奢るぞ?」 「小遣い制の君主って絶対一刀だけだよなぁ・・・ま、それじゃお言葉に甘えますか」 伯珪は翠の補佐として軍事関連に携わっている。上司が良く逃げ出すのでかなり皺寄せが来てる気苦労が多いだろう まるで昔の俺と愛紗のよう、と言う者も多い。愛紗には沢山の感謝と謝罪を。だが反省はしているが後悔は(ry それでも現状に不満はないようだ。それと休日は度々こうしてデートしている 「なぁ、伯珪。俺が聞くのもあれだが・・・・・・」 「なんだ?いつもに比べて歯切れが悪いじゃないか」 「まあ、口に出すのは少しはずいなぁ・・・・・・今、幸せか?」 「ぷっ!あははははは!そんな事か!」 「笑うなよ・・・ったく、変な事聞いて悪かったですね」 「あっははは、拗ねるな拗ねるな」 「す、拗ねてなんていませんっ」 「それが拗ねてる証拠だって・・・・・・ま、今までに比べれば幸せ、かな?愛しい人も側にいてくれるしね」 「ん、そっか。それなら、良かったよ」 「な〜に照れてんだ、そっちから言い出した癖に。ほら、今日はあの店いってみよう」 「ああ・・・そうだなっ」 「随分と楽しそうですなぁ、主殿?」 「か、かかかかか華雄さん?」 「おー華雄、久しぶり。元気だったか?」 「無論元気さ。久しぶりだな伯珪」 「よ、予定よりもお早いお帰りですね?」 「ああ、久しぶりに主殿に会うのを楽しみしていたのだがね・・・」 「あはは、悪いな華雄。昨日ようやく一段落して、今日休み取ってさっき街へ出たとこなんだ」 「そちらも苦労していたようだな・・・・・・さて、主殿?」 「は、はい!」 「流石に少し疲れたので先に戻って少し休む。夜は覚悟しておくようにな」 「ヒィィ!?」 「あはは、頑張れよ一刀」 華雄は戦いが終わり、最初の内は兵の鍛錬や翠達との稽古をしていたがそれだけでは満足出来なかったようだ 武を極める、と言いどこかの山奥へ入り修行に明け暮れていた 先日、納得がいくものを得た、ということで洛陽に帰る旨を書いた手紙が届いたのだが手紙に書いてあった予定よりも早く帰ってきた 早く会える事は嬉しいのだがあのお怒り状態の華雄はとても怖い。昼ならば稽古相手として本気を出すし、夜は夜で赤玉が・・・・・・ 「・・・・・・休むって此処で休むのかい・・・」 伯珪とのデートも終わり、部屋に戻ると俺のベットでぐっすりと寝ている華雄がいた 「少し所じゃなく疲れてるみたいだな・・・」 近づき、頭に手を伸ばして髪を梳く 「修行、か・・・今回は無理だったからなぁ・・・また修行に出る事があるなら、今度はついていきたいなぁ」 星には怒られてしまうな。皆を平等に愛する、と言っておきながらも、どこかで華雄には贔屓してしまう 「ん・・・・・・あるじ、どの?」 身動ぎし、薄っすらと目を開く華雄。だがまだ眠りの世界で船を漕いでいるようで・・・ 「あ、起こしちゃったか?まだ疲れているようならこのままでいいぞ」 「いや、起きよう」 目を擦り、ベットから起き上がる。上にかけていた毛布が落ち、華雄の裸体が顕わになった 「ってちょっとまて、何故に裸で寝てたんだ・・・」 「先程言っただろう?夜は覚悟しておくように、と」 「う、本気でございましたか・・・・・・」 「そう怯えずともいいではないか。まあ」 華雄の手が俺の顔に触れ、引っ張られる。そして華雄の顔が目の前に・・・ 「んむっ、んっ」 「んちゅ、んふっ、んっ・・・ふぅ、今回はこれで勘弁してあげましょうか」 「あ、ありがとう」 嬉しくもあり恥ずかしくもあり、顔が赤くなるのを自覚する。ああ、俺こんな乙女チックだったけか? 「主殿・・・」 「何だ?」 「私は前に、私は武人としての生き方しか知らない。そう言っただろう?」 「ああ、覚えているよ」 「でも、どうやら私は武人である前に女であった、と今回の修行で分かった気がする」 「うん・・・」 「今すぐは無理。でも、少しずつ、女らしい生き方も学んでみようと思う。それまで、ずっと見ていてくれるか?」 「ああ。華雄が変わろうとするのなら、俺はずっと側で見守りたい。例え変わらなくても構わない。俺が華雄を愛しているこの気持ちは変わらないのだから」 「主殿・・・」 今度は俺から華雄を抱き、キスをする。そしてそのままベッドに押し倒して―― 1戦いたした後、華雄に頼みたい事があったのを思い出し、早速頼んでみる 「なあ、華雄」 「どうした?」 「そろそろ名前で呼んでくれてもいいんじゃないかなー?と」 主殿でもご主人様でもいいんだけど、やっぱりたまには名前で呼んで欲しいなぁ、と思うわけなのですよ 「・・・・・・か、一刀」 「うん」 俯き、照れながらも名前で呼んでくれた事が嬉しく、思わず抱きつく 「う・・・少し恥ずかしいものがあるな、これは」 「え〜。恥ずかしがらずにもっと名前で呼んでおくれよん」 抱きついている状態から顔をあげ華雄を見る。丁度位置的に見上げる形になる為ちょびっと目を潤ませれば効果は倍増だ! 「・・・・・・2人きりの時に、そう呼ぶよう努力はしよう」 「よっしゃー!」 しっかり言質は取ったぞ! 「まったく、変な所で子供っぽいのだな・・・・・・ああそうだ、今更だがついでに言おう」 「ん?」 「私の真名は――――」 北郷一刀 薩摩県出身 外史の鍵としての役割を知らず知らずの内に持たされ、そして突端を開くことになった 大陸に降り立ち、いきなり危機が訪れるも関羽の助けにより事なきを得る そして天の遣いとして人々を導き、戦乱を平定する戦いが始まった 黄巾の乱を鎮める一端となり、反董卓連合軍において名をあげ、華雄、呂布といった猛将を下し、配下に組み入れた 洛陽で董卓による暴政が、白装束の暗躍による偽報だと知り、董卓らを保護する 袁紹軍が幽州に攻め入った際、その矛先となった公孫賛を救出し、反撃によってこれを打ち破り河北を制する これにより大陸は魏、呉、そして北郷の3つに分かれ、反董卓連合軍時代から確執のあった曹魏との戦いの幕があがる 呉と同盟し、白装束に操られた曹操を救出した北郷は謀らずしも魏領とその配下の将を得た その後突然大陸中に蔓延した病によって軍事的間隙が出来た際、呉の奇襲によって同盟が破られた しかしそれもまた白装束の暗躍によるもの。孫権と和解した時、白装束に扇動された者達が反乱を起こした その反乱を沈め、全ての元凶たる白装束との決戦を決意する 決戦に勝利した北郷は元の世界へ戻る事はなく、この大陸に寧安をもたらす為に全力を注いだ 彼の死後、多くの人々は悲しみ、彼がこの地へと降り立った幽州啄群に廟を立てた その廟は彼の功績と最初に成した黄巾の乱を鎮めた事から「鎮黄廟」と呼ばれるようになった 彼の生きた軌跡、そして彼にまつわる物語は、悠久の時を得て尚人々の間で語り継がれるだろう 〜END〜 |