「・・・・・・どうしようか?」 「・・・・・・何故そこで私に振るかな一刀」 「いや、だって・・・・・なあ?」 「なあ?と言われてもな・・・」 「キーーーッ!!さっさとこの縄を解きなさい北郷一刀!伯珪さん!」 「そーだそーだ!縄をほどけー!」 「文ちゃんも麗羽様も助けてくれたんだからそういう言い方はやめようよぅ・・・」 事の起こりは数日前、洛陽に都を移した時だ この地を新たな都として政務を行うならば周囲の集落にも顔出ししておいたほうがいいという意見が出た そこで元々この地に住んでいた恋や華雄等の元董軍組みにある程度この地を統治していた秋蘭のアドバイスで準備を整え、実行していった 今日は伯珪と共にいくつかの集落へ行くことになったのだが・・・・・・・・・・ 「両脚羊ネタがこの時期に出るとは思わんかった・・・」 「というかそこまで貧困に喘いでいるって訳じゃないと思うんだけどなぁ、この村」 「だよなぁ、挨拶して少し話すだけの予定だったし、歓迎まではしてくれなくていいんだけどなぁ・・・・・・」 この集落の長から歓迎のご馳走として両脚羊をお出しします、と言われたが慌ててそれを止めた 辛うじて調理前だった食材(?)として捕らわれていた旅人を解放し、謝罪しようとして捕まえていた場所に来た。のだけど・・・・・・ 「無名の庶民ごときがこの高貴な私を食材扱いだなんて・・・せめて宮廷の料理人くらい呼んできなさい!!」 「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」 ・・・・・・・・・・・・見過ごしてよかったかも? 「迷惑かけちゃった旅人にあやまりに来たけど・・・・・・」 「なんというか自業自得って感じ?」 「あーそれは分かるなぁ。姫ったらこの間もお金あんまり無いのに高いもの食べて安宿に泊まることになって大荒れしてたし」 「文ちゃんも十分高いの注文してたよぅ」 「こら!そこの2人!何を和んでいるんですの!?北郷一刀!伯珪さん!貴方達も助ける気があるのなら早く開放しなさい!」 「・・・・・・どうしようか?」 そして冒頭に戻る 「助かりましたわ、北郷一刀」 「助かったー。ありがとな〜」 「北郷さん、公孫賛さん、ありがとうございます」 袁紹達を解放し、集落から持ってきた彼女達の荷物を渡す 「んで、これからどうするんだ?」 「決まっていますわ。庶民ごときがこの私に何をしたのか、とくと思い知らせるためにも10倍返しを」 「まてまてまてまてー!」 自由になった途端何物騒な事言いやがりますかなこの金色は! 「おーっ!10倍返し、いいねぇ」 「あー・・・一応、お前達があの村に攻撃するならこっちも集落の近くで待機してる白馬隊を動かすことになるんだけど・・・」 「「・・・・・・」」 伯珪の発言で強気だった2人も押し黙る 「袁紹様、文ちゃん、すぐにここから離れたほうがいいんじゃあ・・・」 ストッパーとして顔良が動いてくれるが・・・止まるかなぁ、こいつら 「秋蘭と同じくらい苦労してるだなぁ・・・・・・」 「北郷さん、秋蘭さんを知っているんですか?」 「ん?ああ、夏候淵の真名だろう。一応、本人からは許可貰ってるよ」 「そうだったんですか」 「今は洛陽にいるけど、知り合いみたいだし会ってみるか?」 「え?それは・・・」 「なーなー。もしかして、きょっちーもいる?」 「きょっちーって・・・季衣、じゃなくて許緒のことか?一応元魏軍幹部は全員洛陽にいるけど・・・」 「そっか〜。きょっちーもいるのかぁ・・・」 「お待ちなさい文醜さん。全員、ということはあのくるくるおチビもいるんですの?」 「くるくるおチビって・・・ああ、華琳の事か、いるぞ?政治も手伝ってくれて助かってるよ」 「ふ、ふふふふふふふ」 いきなり不気味な笑い声をあげる袁紹とそれを見て引く俺達 「決めましたわ!顔良さん、文醜さん、私達も洛陽に行きますわよ」 「「はーい」」 「そして北郷一刀に協力し、あのくるくるおチビよりも活躍していびり倒して差し上げますわ。おーっほっほっほ!」 「「「ナ、ナンダッテー!!ΩΩΩ」」」 「またきょっちーと食べ歩き出来るし、あたいはそれでいいかなー」 「そうと決まれば善は急げ、ですわ。さあ、洛陽へいきますわよ」 高笑いをあげながら歩き出す袁紹と文醜 「・・・・・・マジっすか・・・・・・」 「・・・あー、なんだ、頑張れ一刀・・・」 「・・・えっと、私も袁紹様が暴走しないようにお手伝いしますから」 「・・・ありがとう顔良・・・」 こうして、俺達に新しい仲間が出来た・・・強制的に・・・・・・ 袁紹達を連れて洛陽に戻り、愛紗達に少し白い目で見られたが客将という形で組み入れた 配下は元々の支配国である河北の人材と元袁紹軍の内希望者を異動させた 最初はみんな心配だったが華琳よりも活躍する、と躍起になって働いている為目だった被害はない・・・・・・はずだ 城では文醜と季衣が大量に買ってきた食べ物を鈴々や恋と一所に食べている光景を見て皆和んだり 華琳と袁紹が蓮華と小蓮と同じように言い争いをして洛陽城名物漫才として一般兵の間で有名になったり それを見て顔良と秋蘭と霞がため息をついたりと概ね平和だ 以前より支配域拡大による人材不足を補うため見所のある文官、武官を登用していたが袁紹達が仲間になってから急に集まるようになってきた 本人曰く、「これこそ名門である私の力ですわ。おーっほっほっほ」との事だがそれが真実なのかは定かではない そして登用した人達と顔を合わせていたある日、運命に出会う・・・・・・ 「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」 謁見に使用している部屋に奇妙な沈黙が訪れていた 原因は今回の仕官者である3人組み 彼らは昔袁紹の部下であったがとある理由で別離し、偶然再会した時に袁紹配下として仕官しに来たというのだが・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・さて、まずは釈明でも聞いてみようか?」 「「あ、アニキ〜・・・」」 「ふ、認めたくないものだな、若さ故の過ちというものを」 「どこの大佐だお前は・・・・・・」 そう、今日仕官してきた3人組みは最初にこの大陸へ来たとき、俺の身ぐるみを剥ごうとしたあの賊達だった 「まあいい、あの時の事は置いておこう。それで、仕官するからにはちゃんとこっちの法、守れるんだろうな?」 「あ、ああ。あの時は生きるために色々やってたが、今はそんなことは必要ねえ。それに、俺達は袁紹様に借りがあるんだ。だからあの人達の下で真っ当に働こうと思ってな」 「そうか・・・借り云々については聞かないが真っ当に働くってその言葉、信じさせて貰うよ」 この3人の登用の書簡に認可印を押す 「ところで、興味本位だけど少し聞きたい。袁紹達に仕官しようとした理由って借りだけなのか?」 ふと思った疑問を尋ねる。すると何を思ったのか3人は少し考え込み、そして・・・・・・ 「もう一度袁紹様になじられたい。ああ、あの罵声(*´д`*)イイ」 「文タン萌え(*´Д`)ハァハァ」 「「・・・・・・・・・」」 一瞬にして妄想の世界へと旅立つアニキとチビ 「もしかして・・・」 「ち、違うんだな!お、おいらはいつも苦労している良さんの力になりたくて・・・」 「お前も苦労してたんだなぁ・・・」 お兄さん少し涙が流れたよ それからは色々あった 貧困に陥っている地方に救援物資や仕事を振り分けたり 天の世界へ戻らないでくれとみんなに泣き付かれたり 警邏に出たら糞餓鬼(左慈というそうだ)に襲われたり 正史と外史の概念、そしてこの世界の消滅の可能性を知り、それを打開する決意と共に皆の協力を得た そして白装束の儀式の神殿を探らせる為細作を派遣してり 白装束との決戦に向けて準備をさせたり 麗羽、斗詩、猪々子との4Pを楽しんだり この戦乱で発生した盗賊の集団が一つに併呑する動きが見られ、賊に動かれる前に鎮圧する為に部隊を派遣したり 軍馬が揃ったものの騎兵数が揃わなくて急遽騎兵志望者を集めて伯珪と華雄に訓練を任せたり 貂蝉の奴が大量の酒を持ってきたので城にいる全員を巻き込んで宴会してみたり ようやく白装束の居場所が分かったものの騎兵訓練が未了で困ったり まあ色々あったわけだ 明日、白装束達との最後の決着を付けるべく、儀式の神殿のある地へと出陣する事が決まった まだ騎兵部隊の訓練が終わっていないので無理だと言ったが数日中には終わるのですぐに合流出来る、と言われたからだ 万全の状態で出陣したいが貂蝉の言った期限までそれほど時間に余裕はなく、そこまで言われては動かないわけにはいかない 後から必ず来てくれると信じ、出陣の準備を開始すると共に各関係所へ引継ぎの書簡を作成した もしも俺が元の世界に帰る事になってしまったら混乱がおき、再びこの大陸に戦乱が起きてしまうのでは?と不安になったからだ それと魏領と呉領は派遣していた代官達に代わり、華琳と蓮華達に統治を任せることにした 全く不安が無いわけではないが、少なくとも今のあの2人ならば無用な戦乱を起こすことは望まないでいてくれると思う 出陣後の城の統治を霞や詠達に任せることも決め、準備は全て整った 後は決戦を待つだけだ・・・・・・ 夜、なかなか寝付けないので城壁へと涼みに来た 外を、街を見下ろす。まだこちらに遷ってから1月くらいしか立っていないが既に幽州の街に負けないくらいの繁栄を見せている そして夜空を見上げ月を眺めながら今までの事を回想していく・・・・・・ ふと周りを見ると同じように夜空を見上げている伯珪の姿が見えた。人の来る気配もなかったし、俺より先に来たのだと思う 最近の伯珪は以前ほどの覇気がなく、気になっていたのだが「なんでもない」と苦笑しながらあしらわれていた 丁度いい機会だし、少し話し合ってみますか 「どうしたんだ伯珪」 「ん?ああ一刀か。いや、ちょっと、ね」 そんな伯珪に近寄り声をかける。すぐに俺に気が付き、返事をしてくるがその表情は少し暗い なんでもない、と拒絶されることはなかったが話すのを躊躇っているように感じた だがここで立ち去っては男が廃るというもの。別方向から話すきっかけを作るためこっちに来てからの伯珪の様子を思い出す 「・・・・・・あ、もしかして、麗羽達のことで悩んでいる、とかか?」 覇気がなくなりだした前後の時期の出来事を思い出して口にだす。どうやらビンゴのようだ。少し驚いて、そして苦笑する伯珪 「うん、まあそんなとこ。あいつらが攻め込んできたとき、みんな私を守る為に逝っちゃって、私もぎりぎりのとこで助けられた」 「そうだったな・・・」 その時の事を思い出したのか、悲しそうな顔で夜空を見上げる伯珪 「だけど、あの後からは誰もいなくならずにここまでやってきた・・・みんなで馬鹿やったり、真剣に訓練したり、色々あった」 「ああ、ほんとに色々あったよな・・・」 「だからこそ、このまま日常が続けばいいって、そう思えるようになったんだ・・・・・・」 「その意見には賛同するが俺としてはもうちょっと仕事量が減って楽になるといいなーとか思ったりするんですよ?」 「ぷ、あははははははは、一刀らしいな・・・・・・でも、この戦いが終わったら、一刀は元の世界に帰っちゃうんだろ?」 「それは・・・正直、どうなるかは分からない」 貂蝉の言っていた事が本当なら、左慈達の儀式を止めればこの世界は継続する だけど俺というファクターがその時どうなるか?それは分からない・・・ 「だけど、俺にとって有るべき世界はこっちで、ずっとこの世界に居たいと心から願う。だからこそ、この世界を消滅なんて絶対にさせない」 「一刀・・・」 伯珪の目尻に少し溜まっていた涙を拭い、俺の決意を告げる 「なら、約束してくれ。勝手に私を置いて帰らないって。ずっと一所に、いてくれるって・・・」 「ああ、約束しよう。離れる気もないし離れたくもない。俺も伯珪とずっと一所に居たいんだから・・・」 正面から伯珪を抱き、キスをする。伯珪も抱きついてきて、俺の胸に顔を埋めて静かに涙を流す そんな伯珪の頭を撫でながら俺は絶対に離れないようにと願いながら夜空の星を見る オチ 「なあ、一刀」 少し、落ち着いた伯珪が俺の様子を伺いながら聞いてくる 「なんだ?」 「やっぱり、こういう時はこの前の華雄のようにするべきか?」 「ぶっ!?な、なんでそれを」 「や、この前ここでやってるの見ちゃってさ・・・朱里と月と一所に歩いてたら偶然」 そういいながらどこからか縄を取り出す伯珪 「朱里も月もこういうのはあまり得意じゃなくって詳しくは教えてもらってないけど、上手く出来るかなぁ」 あの2人までこっち方面を学ぶ気か!? 「違う、俺はノーマルだーーーーーー!!!!」 無論ノーマルの意味なんて伯珪が知る由もなく、美味しく頂かれましたとさ(ノД`)シクシク |