卒業を数ヶ月後に控えたある日。
和宏はいつものように久遠と共にピアノの練習をしていた。
心の奥底から溢れてくるメロディーを思い出そうと、懸命に久遠にピアノを習う和宏。
しかし―――同じ時間を過ごしているうちに、二人は自然とお互いの存在を意識し始めていた。
すぐ側にいるのに―――いや、すぐ側にいるからこそ、触れ合うことのできない心と心。
踏み込むことができない一歩を躊躇する毎日。
そんなある日。
ひょんなことから二人はお互いの気持ちを確認しあうことができる。
そして始まる、新しい二人の関係。
だが―――新しい何かを手に入れた和宏は、必然的に古い何かを忘れ去る。
そして―――その何かは、ゆっくりと……だが、確実に和宏の心の奥底で動き始めていた。
あれから―――1年という長い刻を経て、再び運命の歯車が回ろうとしていた。 |